RCP 60th anniversary
「革新、脱構築、そして新境地へ」

中里:渉さんは、パリのアラン ミクリで眼鏡デザイナーとしてのキャリアをスタートされていますよね。そもそもどういう経緯で?

西尾:もともと洋服が好きで、ヨウジヤマモトに憧れ日本の服飾学校に通い、その後19歳で渡仏しパリの服飾学校に通いました。まぁ、クラスメイト全員がとんでもない天才で。完全に打ちのめされて、日本から持っていったプレステを捨てて本気で勉強しました。

中里:それで、コンクールで賞を取ったりもしたんですよね。

西尾:その後卒業をするためにはインターンとしての経験が必要で、何社かに履歴書を送ったんです。その中の一社がアランミクリ。他社は面接の日程だけを伝えてくるなか、「今すぐ君を必要としている」と言われて。私はアパレルや鞄のデザインをしていたんですが、まぁ、キツくて。
自社のアトリエで試作まで作り、月に1度アランに見せる会議があって。そこで、今までやってきたものをゼロにされるなんて日常茶飯事ですよ。

中里:そんなに厳しいんだ。

西尾:その後、大きなリストラがあったんですが、アランが「お前は残す。お前の絵はいいから、眼鏡もできるはずだ」と言ってくれたんです。

中里:それから、眼鏡を手掛け始めるんですね。

西尾:そう。でもそのうちに、自分はデザインばかりをしていて、原価とか経常利益とか、経営という概念がまったくないことに気が付いたんですよ。このままではヤバいと、帰国を決め。まだ25歳だから、人生やり直せると。

中里:その若さで充分過ぎる経験を積んでいますけどね。

西尾:世界トップレベルの……パワハラを経験(笑)? でも、モノ作りに対して妥協をしないという姿勢は本当に勉強になりました。で、日本でどうするかっていうときに、「すごい男がいるから紹介するよ」と言われたのが、当時アール・ピー・シー株式会社の専務であり、眼鏡ブランドのディレクターをしていた今井康裕ですよ。

中里:2002年ぐらいですね。

西尾:初めてお会いしたときは、ずっとくだらない話しかしていなくて、最後に「眼鏡やりたいなら絵を持ってきてよ」と言われて。今見たら、ものすごいヘタクソな図面なの。でも、笑うことなく真面目に見てくれて、しかも採用したのよ。君はすごくいいって。そして「俺、会社作ろうと思っているから、一緒にやらないか」と。

中里:それが眼鏡メーカー・インスタイルであり、レス ザン ヒューマン(以下、レス)というブランドが始動するわけですね。

西尾:もう一人のデザイナーである甲賀さんを含め、初期の頃は本当に少数精鋭で。

中里:猛者の集まりでしたね。

西尾:レスの人気に火がつき、ビジネスの規模が物凄い勢いで大きくなっていく中で、私は製造や流通など商売の仕組みを今井さんからすべて教わることができました。眼鏡デザインについては、甲賀さんに師事し考え方に大きな影響を受けました。とはいえ、コレクションは限られているので、どちらのデザインが選ばれるかは本当に真剣勝負でした。

中里:その切磋琢磨があったからこそ、当時のレスからは、これまでの眼鏡の既成概念を覆す斬新なデザインのモデルが数多く生み出されたわけですね。

西尾:あそこで濃い時間を過ごせたからこそ、今の自分があると思っています。

中里:そして2014年に自身のブランドであるファイブスタライズがスタートします。こちらはディレクターという立場でブランドを運営していますよね。

西尾:ファイブスタライズは、マーケティングビジネスだから。あくまでマーケットありきなモノ作りをしています。

中里:どうしてそうしたスタイルに?

西尾:独立してから、週末はエロチカの店頭に立たせてもらって、そこで世の中のトレンドや、マーケットがすごい理解できたの。私はそもそもデザインする立場だから、売れるものというより、デザインとしてのカッコよさや設計の細かなことを考えてしまいがちなんですね。でも、それだと、今の時代は難しい。

中里:そこで、若手の女性デザイナーを入れ、うちの店舗のスタッフでもある同じく若い世代の男性をMDとして起用し、皆で作り上げるスタイルにしたと。

西尾:そう。彼らのフツーの意見が大事なんです。私が言ったことに、平然とダメ出しをしますから(笑)。

中里:インディペンデントなブランドの中でも、独自路線を貫かれてますよね?毎年コレクションを発表するわけでもないですし。

西尾:そう、マイペース。だって、毎回展示会やって、お店さんに買ってもらって、全部消化できるのかって考えちゃうのよ。

中里:意外とリアリスト! でも一方で、モデル名はコンセプチュアルだし、ブランディングはしっかりしていますよね。パーツ一つ取っても、すごくこだわっているし。

西尾:もちろん。今のお客さんはコンサバで、派手なものはいらないけど、眼は肥えているんですよ。だからシンプルかつ美しいフレームを作っているわけなんです。

中里:では最後に質問。今後、別のブランドを立ち上げることは考えていますか?

西尾:それは、その時が来たらね。本当に得意なことができる時代が戻ってきたら、もう無敵ですよ。

※インタビューの記事はR.C.P全店舗にて無料配布しております
60周年記念LOOKBOOKにも掲載しております。


QUESTION & ANSWER QUESTION & ANSWER
普段メガネはかけていらっしゃいますか?
または、どんなメガネをかけられてますか?

はい、かけています。 最近は一周回ってシンプルな黒ぶちばかりです。
職業柄300本はコレクションしてます。
一番大事にしているのは、ユーザーの気持ちが分かるように、常に最新設計のレンズを入れるように心掛けている事です。

自身が手がけたアイウェアをかけてもらいたい著名人はいますか?

いません。芯が強く、自分を持っている大人な方なら誰でも。

好きな本、音楽、映画はありますか?

映画:
1位『ゴッドファーザー PART1、3』 監督:フランシス・フォード・コッポラ
2位『活きる』 監督:チャン・イーモウ
3位『悪い奴ほどよく眠る』 監督:黒澤 明
4位『ラストエンペラー』 監督:ベルナルド・ベルトルッチ
5位『パルプ・フィクション』 監督:クエンティン・タランティーノ
6位『ラスト、コーション』 監督:アン・リー

漫画:
1位『NARUTO』 作者:岸本斉史
2位『ジョジョの奇妙な冒険 第2~5部』 作者:荒木飛呂彦
3位『大甲子園』 作者:水島新司
4位『神の左手悪魔の右手』 作者:楳図かずお
5位『キングダム』 作者:原泰久

右脳派・左脳派どちらですか?

混合型

座右の銘は?

ゆるリッチ
欲深く無く、自分に対しても他人に対しても頑張り過ぎず追い詰めずに、優しく接し思いやる。
"ココロとフトコロ"に余裕を持つ事が一番大事。

PROFILE

FIVESTARISE:「FIVESTARISE(ファイブスタライズ)」とは、 数字の「5」と「★」をスタイリッシュに組み合わせた造語。 デザインの為のデザインではなく、美しくなる為のシンプルなミニマリズムデザイン。「"艶”&“Sexy"」をアイデンティティとし、肩に力を入れすぎない艶っぽい上質を届ける為に「The Casual rich and matured leeway(ゆるいリッチな大人の余裕)」をブランド理念としている。

HP>>>https://www.fivestarise.com/
Instagram>>>https://www.instagram.com/fivestarise/

Photo_NOJYO

Text_Mirei Ito

撮影協力_Zig TOKYO