RCP 60th anniversary
「眼鏡の価値をもっと上げていきたいんです」

田辺:今泉さんは、他業界で様々な経験を積んでから眼鏡デザイナーになったんですよね?

今泉:そうです。最初は眼鏡に対してネガティブな印象を持っていました。その当時、渋谷や原宿のお洒落なショップで眼鏡を買っても全然カッコ良くならず、モヤモヤしていましたね。その後美容師になり、一旦別の世界を見てみようと代官山のクラブの立ち上げに参加するんですが、そこで出会った友人のつながりで、福井に行く機会があって。

田辺:福井といえば眼鏡の産地ですね。

今泉:そうです。そのとき立ち寄ったのが、福井市の田中眼鏡本舗さん。なかでも一番目に留まったのがイエローズプラスでした。ものすごく気にいったんですけど、その時に欲しい色がなくて。とはいえ、オーダーができるわけでもなく……。しばらく悶々とした後、だったらもう作ればいいじゃんって。仕事を辞め、朝は荷揚げ屋、夜は解体屋で2年間働いて、軍資金を貯めました。

田辺:その後、イエローズ プラスの山岸さんのもとで学ぶことになるんですね。

今泉:そうです。山岸さんから「サンプルを作ってあげるよ」と言われ、そこで描きだしたのがNEW OLDだったんです。当時はまだイラストレーターも使えず、手描きのデッサンを修正液で何度も直しながら山岸さんに送っていました。山岸さんは、それをデータに起こし細かな設計を図面でフィードバックしてくれたりなど、逐一丁寧に教えてくれて。そしてついにNEW OLDが完成。貯めたお金で、すぐ量産をお願いしました。

田辺:そのデビュー作が今でも代表作となっているのは、すごいですよね。そうしたセンスはどこで培われたんですか。

今泉:僕、眼鏡についてはずっと消費者でもあるんです。今でも、他ブランドやヴィンテージを買っていて、実際に掛けて何がいいのか検証する。それを繰り返しながら、プロダクトに反映しているのは大きいかもしれない。

田辺:デザイナーでありながら、消費者でもあると。

今泉:あとは若い頃、周囲にいた洗練されている人達のおかげで、物の見方やファッションについて学ぶこともできました。今でもファッションブランドのOEMや別注は、考え方を学ぶのに格好の機会だと思っています。

田辺:学ぼうとする意欲がすごいですね。

今泉:そうでないと、置いていかれちゃうじゃないですか。僕はもともと眼鏡の世界にいた人間ではないので、皆がやっていないことをやろうという気持ちが強いんです。

田辺:ブランドのPRも積極的に行なっていますね。

今泉:それはファッションブランドならば当たり前のことで、ブランドとして認知してもらうには、もっと露出していかなきゃいけない。アヤメが露出を頻繁にしているのは、眼鏡自体に興味を持ってもらいたいからという理由もあるんです。

田辺:直営店をオープンしたのも、そうした理由からなんですか。

今泉:お店については、お客様の反応を直に感じたいというのがひとつ。それと、僕はブランドをやる上では、自分が好きなもの以外作ったらマズイと思っているんですね。たとえそれが一般的に“売れる”ものでなかったとしても、自分たちで販売できる場があれば、最後まで責任を持てるじゃないですか。それがブランドの底上げにもなるんじゃないかなって。

田辺:なるほど。シンプルだけど、なかなかできることではないですね。

今泉:ショップを持って思うのは、ショップもある意味でブランドだということ。「ここのお店に行けば安心だ」というのは、それだけで立派なブランド力ですよね。アール・シー・ピーのお店は、各店ごとに個性があって、それが魅力だと思います。今回のコラボも、めちゃくちゃおもしろいと思う。

田辺:コラボするなら、色はゴールドでと思っていたので、最初はMANRAYを予定していたんです。でも、「SIPPOUはどう?」と今泉さんから提案を受けて。

今泉:メタル単体よりも、クリア生地を纏ったほうが、ゴールドがより際立つと思ったんです。それにSIPPOUはアセテートのモダンなので、フィット感も高いですし。

田辺:クリア感がより強調されるよう、フロントの七宝も少し分厚めになっているんですよね。少し黄味がかった、ヴィンテージライクなキハク色にしようかという話もありましたが、まるでフレームが裸にされたかのような無色透明のクリアに。

今泉:はじめはクリアで、それが少しずつ黄ばんでいくのも味があるのかなって。

田辺:コラボという一時的なアイテムでありながら、経年変化が楽しめるのはいいですよね。

今泉:ちなみに、今って眼鏡の買い替えサイクルはどれくらい?

田辺:2年半から3年ぐらいが平均ですかね。

今泉:もう少し、その期間を短くしたいよね。皆、靴はもっと買うのに……。僕は自分の眼鏡の価格と近いアイテムは、すべてライバルだと思っています。たとえば使えるお金が5万円あったとして、そのときの眼鏡の優先順位をあげたい。そのためにはどうしたらいいのか、ずーっと考えているんです。

※インタビューの記事はR.C.P全店舗にて無料配布しております
60周年記念LOOKBOOKにも掲載しております。


PROFILE

クリエイティブディレクターの今泉悠氏が2005年に眼鏡作りの道を志し、眼鏡の産地・福井県鯖江市でノウハウを学び、その後、独学で研究。2010年にアヤメを立ち上げ、ファーストコレクションを発表。自身の出身地・茨城県潮来市のシンボルの花であるアヤメ(菖蒲)に、目を彩る=彩目(あやめ)という想いを重ね、ブランドネームとして掲げる。
日本人の顔を最も美しく見せる為に徹底的にサイジング・質感・フィッティングに拘るアイウェアブランドである。

HP>>>http://www.ayame-id.jp
Instagram>>>https://www.instagram.com/ayame_id/

Photo_NOJYO

Text_Mirei Ito

撮影協力_Zig TOKYO